しんのすけの世界 TOPへ
 

 柴犬は天然記念物か?で大騒ぎ (デッドデータリストと天然記念物)


 私の職場でちょっとした騒ぎ(大げさですけど)がありました。
 それは、柴犬は天然記念物かどうか?、ということについてです。

 騒ぎの発端はこうです。
 私の職場の先輩のSさんは柴犬を飼っておられます。同じく先輩のKさんは、何とはなしに、Sさんにこう言いました。
 「柴犬は天然記念物に指定されているらしいね。
 なぜ、Kさんはこう言ったかというと、子供向けの犬の本にそう書いてあったのを見たことがあるからです。

 これを聞いたSさんは驚きました。オオサンショウウオやトキとかならまだしも、天然記念物がそのあたりを走りまわったり、ましてや個人がペットとして所有できたりするわけがない・・・。
 それでSさんは、「柴犬が天然記念物に指定されているわけがない。」と主張しました。

 なんとはなしに言ったことだといっても、自分の言ったことを端から否定されたKさんも、こうなると譲れません。
 「子供向けの犬の本にたしかに書いてあった。今度、持ってくる!」


 そして、後日、Kさんは、例の子供向けの本を持ってSさんに見せに来られました。私もちょうどその場にいました(この件について私が知ったのはこの時です)。
 その本は永岡書店の、だいすきこいぬ、という本で、そこにはたしかに、「柴犬は昭和11年に天然記念物に指定されました。」と、書かれていました。

 しかし、Sさんは、柴犬が天然記念物ではないという主張を崩しません。なぜなら、柴犬はそのあたりにごろごろいる犬だし、中には保健所で処分される柴犬もいる、天然記念物なら、自宅でペットにしたり保健所で処分したりできるはずがない、というわけです。Sさんは、この本に書かれていることが、本当のことだとは思えないと言うのです(実はこの時、私もSさんに加勢していました)。

 「じゃあ、オレはこの出版社に電話して確認する!」とKさんは怒りをあらわにしました。子供が読む本に間違いがあっていいのか!ということです。

 最終的に、Kさん、Sさん(他、何人かその場にいました)双方が、私がネットを使ってこの件について調べる、ということでその場はおさまりました。


 そして、結局、柴犬は天然記念物なのか? 
 結果は、柴犬は天然記念物でした(こちらを参照してくださ http://www.nihonken-hozonkai.or.jp/page004.html)。

 上記のURLに書かれていることをプリントアウトして、私は職場へ行きました。先に私が会ったのはSさんの方でした。
 「Sさん、まずいことになりましたよ・・・。」と言って私はプリントアウトした紙をSさんに見せました。
 「まずいなあ、こりゃ・・・。」とSさん。

 その後、Kさんにもこの紙をみせて、Kさんが正しかったことを伝えました。
 
 そののち、Kさん、Sさん、両者が出会うと、「見てみぃ!」とKさんはSさんに言い、Sさんは「これはだなぁ・・・・云々・・・・。」と、まだ、会話は続いていました。

 とにかく、柴犬は天然記念物に指定されていたのです。


 なぜ、こんなことで大騒ぎになったのだろうか・・・。
 私はその後、一人で考えました。おそらく一つの理由として、私たち、現代人の価値観の一つに、[価値あるもの=希少性]という感覚が深くしみついているからではないでしょうか。

 天然記念物に関しては、希少性よりも、日本特有という色彩のつよいものであるようです(こちらを参照してくださいhttp://www.pref.mie.jp/BUNKAZAI/HP/tennen.htm)

 実際に数の減少により絶滅のおそれのある動物に対しては、レッドデータリストというものがあるようです。
 レッドデータリストと天然記念物の違いは、一般的に、あまりよく知られていと思います。
 このことに関して、「動物と自然のメールマガジン」から引用させてもらうことにしました。
 (もっと詳しく見られる方はこちら http://www.melma.com/mag/87/m00003487/a00000049.html)

 *-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
         ◇ レッドデータリストの動物達 ◇
 -*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
 <レッドデータリストとは:> 国際自然保護連合(IUCN)によって、1966年から発行されている、 「全世界の絶滅のおそれのある動植物のリスト」の事です。 日本版レッドデータブックは環境庁のホームページで確認する事が出来ます。 http://www.biodic.go.jp/ (環境庁生物多様性センター)


◆今回は天然記念物とレッドデータブックの違いについてお話します。
 海外の基準については、国際自然保護連合によって、統一基準があり、レッドデータリストとして纏められていますが、日本の場合には天然記念物 という表現があるがために、レッドデータブックと特別天然記念物では、どちらが偉いのでしょう?というような質問が来たりします。(^_^;)  
 さて、この二者ですが、天然記念物というのは文化庁が指定します。
 文化庁というのは、その字が示すように文化財的(学術的ではない)な価値のある動物などを指定するものなので、実際に生息数が激減しているような  シマフクロウを天然記念物として指定し、タンチョウのように、ある程度 保護が進んでいて、種の存亡という視点で見た場合には、余力のあるものが 特別天然記念物に指定されていたりします。
 このような例では、先回お伝えしたオオサンショウウオも当面の間は、絶滅の危機に瀕する事はないとは思われますが、特別天然記念物に指定され 、岩国のシロヘビも神の使いとして大切にされているので、特別天然記念物  という指定を受けています。
 それに対して、レッドデータブックの場合には、生息数や生息域の状況を 客観的にデータとして捕らえた上で、定められた基準に従って環境庁により 指定されています。
 ですから、絶滅危惧種であれば、それは正に日本の国から、それがまた日本の固有種の場合には、地球上から消え去ろうとしている事を意味します。
 過去に紹介した、ニホンカワウソやアマミノクロウサギなどは、ごく近い将来には野生で生息する個体がいなくなるという危機的状況にあります。
 つまり天然記念物に指定された動物は、文化的価値を認められたものであり必ずしも、保護を必要としているわけではありません。 純血の日本犬(紀州犬・秋田犬・甲斐犬など)も、天然記念物ですが、逃走して捕獲された場合や、飼い主が持ち込んだ場合には、保健所などで処分されてしまうという現状を考えた場合、「天然記念物」という言葉に、あまり意味があるとは思えません。


                                
2004. 3.18
 
                        しんのすけの世界 TOPへ