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 しんのすけエッセイ 21


 とんでも思考・・・1つ以上のスキル・・・   チャールズ・ハンディ

 

 私の最近の英語の勉強はもっぱら、ペンギンリーダーズを読むことです。語彙数を制限してあるので、簡単に読めます。
 先日読んだ、Management Gurus(経営の師たち)はとても面白かったです。
 この本では、マネジメントに関わる人々が紹介されているのですが、そのなかでも特に、チャールズ・ハンディ(Charles Handy)のところは、非常に示唆に富むいい内容だったので、ぜひ、みなさんにお伝えしたいと思いました。

 この本を読むまで私は存じてなかったのですが、世界ではピーター・ドラッカーと双璧をなす経営哲学者だそうです。ロンドンビジネススクールの創設者の一人で、石油会社のシェルでビジネスに携わっていました。


 以下、この本に書かれている、チャールズ・ハンディの紹介文を訳しました。興味のおありのかたはぜひ原文をお読みください。


 私たちは、非常に大きな変化の中にいるとハンディは確信しています。彼の一冊の著作の中で、彼は私たちの置かれている状況を、約500年前に南米に住んでいた人々の状況にたとえて書いてます。

 はじめて巨大な帆船を目にした南米の人の話を彼は語ります。この人はこのような巨大な帆船をいままでに見たことがなく、彼はこんなものが存在するはずはないと決め付けます。
 「心配することは何もないさ。」と、彼は自分自身に言います。「天気のせいで、こう見えるだけさ。」
 もちろん、帆船は存在していたわけで、その中にはたくさんのスペインの兵士がいました。彼らが南米の海岸に到着して以来、南米の人々の暮らしは永遠に変えられてしまいました。

 遠くを見れば、未来の暮らしのおぼろげな姿が見えるとハンディは考えます。しかし、この南米の人の話のように、私たちはこのことを心の外に追いやってしまいがちです。これが大きな間違いなのだと、彼は考えます。遠くに見えることをもっと心配すべきだと言います。なぜなら、この遠くに見えることは恐ろしいことなのであるし、私たちの暮らしを一変させるものであるからです。また彼は、私たちがそれに対して準備ができていないことにも心配すべきだと言います。

 過去において、私たちは、「理由ある」時代に暮らしていました。世界は秩序だっていましたし、すべてのことは取り仕切られていました。人々は、それを好むと好まざるとにかかわらず、変動があることを理解していましたし、受け入れていました。
 しかし、今日、私たちは、「理由なき」時代に住んでいるのです。「理由なき」時代においては、だれも現代社会で起こることを本当に理解することはできないし、また、だれもそれを説明することができません。

 大きな変化にどう対処すればいいのでしょう?ハンディは、古い考えを捨てよと言います。現代社会を理解するために必要なのは、「とんでも」思考('upside down' thinking)だと、彼は言います。不可能なことをイメージし、予期しないことを予測すること。しかし、こんなことができるのでしょうか?このためには次の3つを使わなくてはなりません。すなわち「情報・アイデア・知性」(原文では3つの’I’、information, ideas, intelligence)です。

 ピーター・ドラッカーやトム・ピータースと同様に、ハンディも、知識労働者とコンピュータがビジネスの世界を変えつつあると信じています。将来において、会社での生活や事務所での生活というものが消滅し出すであろうと彼は言います。もっと多くの人々が自主性を持ち、自分自身のために働くようになるでしょう。彼らは電話やコンピュータをコミュニケーションの手段に使い、自宅にいながら他の人々と共に働くようになります。これは企業にとって、良い知らせとなるはずです。なぜなら、都会の真ん中に高額な事務所をかまえる必要はなく、また、たくさんの人々に定期的な給与を支払う必要はなくなるからです。
 しかし、このことは、ごく普通の人々にどのような影響を与えるのでしょうか?

 チャールズ・ハンディは、普通の人々の生活もまた向上すると楽観しています。将来、人々は、もっと家族や友人たちと共にすごす時間を持つであろうと彼は信じています。なぜなら、彼らは働くために毎日あちらこちらを歩き回る必要がなくなり、たいていは自宅で仕事をしているからです。
 しかし反面、彼らの人生はさらに難しくなるでしょう。おそろくほとんどの人たちが生活を成り立たせるために、1つ以上の仕事、1つ以上のスキルを必要とするでしょう。もしかしたら、教師は作家やコンサルタントになる必要が出てくるかもしれません。はたまた警察官は警備員や探偵業もこなさなくてはならないかもしれません。

 それにしてもこの世界が「とんでも」世界になるとき、何が起こるかは誰にも予想できないのです。


 日本語で読めるチャールズ・ハンディのい著作は多くありませんが、私は「もっといい会社、もっといい人生―新しい資本主義社会のかたち」を買いました。
 
                               2005/9/6


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