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 have =[持つ] か?



 「日本人は・・・haveというコトバを[持っている]という意味にとじ込めたために、がんじがらめにされたまま生きてきたのだ。」と副島隆彦氏は言います(『英文法の謎を解く』ちくま新書)。

 have は混乱を招く言葉です。今では違うのかもしれませんが、私が中学で習った当時、初めて登場したhaveは「持つ」の意味でした。I have a map. のような感じで。そう習うと当然、have=持つ であると解釈します。
 その後、学習が進むにつれ、混乱させられることになります。have to 〜 で「〜しなければいけない」、さらに have +過去分詞で現在完了・・・。もうこのころになるとお手上げです。「持つ」のhaveがどうしてこうなっていくのか。当時先生に質問したら、「持つ」のhaveとはまた違う、というようなことを言われて終わったように思います。

 今から思うと、この説明は間違いです。そもそも、同じ言葉が使われているところからして、たとえ結果的に別の意味が出てくるにしても、ここには何か共通した同じ”感じ”、ニュアンスがあるはずなのです。
 そう考えるともっとシンプルにhaveを説明できるはずです。


 前述の副島氏は「haveは、beと同じで、[存在][在る][そこに在る]ということを表している表現なのである。beとhaveは、同祖なのである。」と言います(前掲書)。
 西村喜久氏も「haveは[持っている]と覚えている方が多いのですが・・・本当はそうではありません。」としたうえで、「[現在すでに与えられている][すでに加わっている]・・・この世界がhaveの世界なのです。」と言います(『これが動詞の謎の正体だ』明日香出版社)
 ついでに私自身の意見を述べますと、haveとは、その主語(人、モノ)と非常に近い状態にあるものを表す言葉、beと≒な働きを持つ、です。

 以上をふまえて、ここではhaveを使った3つのセンテンスの例を出して考えたいと思います。

 初めに「持つ」と訳されるセンテンス、I have a car. です。
 くりかえしますが、haveは「在る」「加わっている」「その状態にある」という感じです。I have a car. この感じをそのまま日本語にすれば、「私はクルマと近い存在としてある(だから、ガソリンも必要だし、税金も払わないといけない)。」という感じでしょう。クルマと近い、クルマが自分に加わっている、そんな状態。だからといって、×I am a car. ほどではないのです。

 ふたつめに「〜しなければいけない」の意味で、I have to work tomorrow. です。
 これは思い切って、haveとtoの間で区切ってしまいましょう。まず、I have、これで、「私はその状態にいる」の感じが出てきて、そして、to work 「働く(こと)」、つまり、「(明日)私は働くということの状態にあるのだ、[働く]ことが私に加わっている」というところから「働かなくてはならない」という意味が出てきます(このあたりからmustとのニュアンスの違いが明確になると思います。)。

 最後に、現在完了です。例文、I have finished my homework. を考えます。
 I have、「その状態である」に続いて、finished(やり終えた)my homework、感じとしては、「私はその状態にいる、宿題をやり終えたという状態。」
 ここから、たんなる過去形、I finished my homework.よりも、今終えたばっかり(だから遊びに行こう!)という感じが出ています。haveを用いることにより、今その状態にいる、いま終わったばかりの宿題が私に加わっている、というニュアンスが出ています。
 このhaveをhadにすれば過去完了のできあがりです。過去に宿題をやり終えた状態であった、という感じです。


 have は便利だと思います。日本語の発想から思わずbe動詞を使ってしまいそうになるところで、haveを使えばなんとかなります。
 あなたは飛行機に乗っているとします。前の座席のほうからフライトアテンダントが食事を配ってきます。「ビーフですか?チキンですか?」という彼女の問いかけにあなたは頭の中で「オレはチキンだな。」と発想します。
 ここで、"I have chickin." は大丈夫です。"I am chickin."はやめたほうがいいですね。





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                                             2003. 5. 7