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 be動詞が起こす混乱


 
 私が教わっていた英語のネイティブスピーカーの先生に「動詞は他にもあるのに、日本人はすぐにbe動詞を使ってしゃべる。それはなぜか。」と質問されたことがあります。私はそれに対して、こう答えました。
 「日本語は『ある』言語で、英語は”する”言語だ。日本語の発想にbe動詞は相性がいい。」

 英語を学ぶ日本人に、初めのうちにbe動詞を使った英文(This is a pen. や I am a boy.)を教えることは良くないと思います。理由を二つ挙げてみます。
 @ be動詞が日本語の発想と表面上の相性がいいために、英語(インド・ヨーロッパ語)が日本語と全く発想の違う言語であるということに気付かせない。
 A 新しいことに挑戦する初めのうちはみなやる気があるものである。やる気のあるうちに覚えるために、過剰にbe動詞が刷り込まれてしまう。

 
 『ビッグ・ファット・キャットの世界一簡単な英語の本』(向山淳子・向山貴彦 著  幻冬社)は英語学習の取っ掛かりの文として、"The cat scratched Ed." から始めています。これは非常によいことだと思います。動作の主が目的の者に対して動作を行うという、SVOの第3文型から始めていますが、この型をじっくり見ると、日本語との発想の違いが見えてきます。

 英語の世界は動きのある世界であり、その世界では、何かが起こるとき、それを起こす者がいて、その結果影響を受ける者がいます。物事があって然るべき状態で「ある」、動きの少ない日本語の世界と大きな違いがあります。
 (英語を話す時に必要な発想の背後には、「無からは何も生まれない」という世界観があります。これは科学的な態度の土台でありますし、時代をさかのぼれば、古代ギリシャで、今日哲学と言われる思考の形態の元として始まったのものであります。)


 be動詞を使った文は、日本語話者に対して、その日本語との相性のよさから、なんとなく意味がわかったような気にさせます。現状のような、be動詞を使った文を学習の始めに学ぶことが、英語と日本語の違いを分かりにくくさせ、その後、混乱を起こさせます。
 英語の学習が進むにつれてわからなくなったことが、実は一番初めの理解に原因があったとは、なかなかわからないものですし、わかったとしても戻ることは難しいことです。
 これは今までの理論では説明できないことがらが発見されてきた科学の歴史(地動説や量子力学等の登場)に似ています。

 英語の学習の取っ掛かりは、他動詞を使った文から始めるべきです。






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