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カップのコーヒー? グラスのワイン? ムヒ or ダマリン (「かたち」と「質」)
「'a cup of coffee' とか、'a glass of wine' など、なんで、いちいちカップだのグラスだのと言わないといけないのか?」
皆さんは英語を勉強する中で、このような疑問を抱かれたことはありませんか?
「コーヒーをお願いします。」を英語で言う場合、
×'I would like coffee.' とは(一般的には)言わず、
'I would like a cup of coffee' と言います。
ワインであっても同じことです。
'I ordered a glass of wine.' 「ワインを注文した(グラスワインを一つ)。」
'There is a bottle of wine in the refrigerator.' 「冷蔵庫にワインがある(一本のボトルの)。」
なぜ、こう言うのでしょう。その答えは、英語話者の持っている世界観、世界に対する態度、ものの見方にあります。
ここでは、「(目に見える)かたち'form'」と「質'material'」は別のものであるとはっきり意識され、認識されています。
この認識のあり方は、全く、現代的であり科学的であります。「かたち」と「質」を明確に区別しない日本語はこの点で現代社会と相性が悪いと言えると思います。
同じかたちをしていても、材質に違いがあるものは世の中にたくさんあります。金でできた指輪と銀の指輪は違います。スチールボディのクルマとアルミボディのクルマは違います。
また、かたちに惑わされず、中身(質)が何なのか、を強く意識しないといけない場面は現代において、多々あります。医薬品は特にそうです。
先日、私の父は、蚊に刺されたところに間違えて、水虫薬(ダマリン)を塗ってしまっていました。当然ながら、同じようにチューブに入っているからといって、それがいつでも虫刺され薬であるとは限らないのです。
会話の中などで、何かの言葉が出てきた時、聞き手の英語話者は、それが「かたち」をともなっているか、それとも「質」に関することかを考えています。だから、「質」に関する言葉が単体で出てきたとき、それをどのようにイメージしたらよいのかわからず、落ち着かなくなってしまいます。英語はビジュアルチックな言語です。
[補足]
「かたち」と「質」という言葉を使ってきましたが、アリストテレスにおいて(一般に日本語訳として)これらは「形相」と「質料」と言われています。アリストテレスは、現実は形相と質料が一体となってできたさまざまな個々のものから成り立っているということを打ち出しました(『ソフィーの世界』ヨースタイン・ゴルデル著)。この考え方は、彼の師、プラトンのイデア論に対し異議を申し立てるものです。
よろしければ以下、参考にして下さい。
英語学習記 No.2 ".a" の謎とプラトン
No.3 "the" の謎とアリストテレス
2003.
6.18
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